修了式

 今年も早いものでもう7月。そして今日は七夕。彦星様と織姫様はこの一年一度の逢瀬を愉しまれてみえるでしょうか。実は私にも年に一度の逢瀬ではないですが、心待ちなことがあるのです。先月です。毎年6月の末です。自衛官候補生修了式という式典があります。これは毎年4月に教育入隊した自衛官候補生が約3か月の教育を修了し、全国の各部隊へ配置される日です。4月入隊の候補生が、たった3ヶ月の教育でこのように逞しくなるものかと驚かされます。入隊式の時に記念の会食があり、候補生たちと話をしながら食事をいただきます。保護者の方々も同席している候補生も沢山います。まだまだ子供っぽい感じが残り、どことなしか不安な気持ちがよくわかります。そのような人間が、今日の修了式では見事に成長し、ここでも行われる記念会食での私たちとの対話は入隊式と全く異なり、はきはきと応え、頼もしさを感じます。本当に素敵です。
 入隊前の生活と隊での生活は全く異なるものだと容易に推察できます。たかが3か月と言ってもなかなか辛抱できるものではありません。勿論昔の軍隊のように厳しい規律ばかりではないことは今の時代ですからわかります。しかし他の行政機関や民間企業より厳しいことも理解できます。3か月の教育期間中の写真レポートを見ました。団体生活を忘れさせず、しかし個人も尊重しながらメリハリを付けた教育を行い、そして何よりも武器を与えられる職務ですから、その取扱いについては徹底した教育が行われていることが伝わるレポートでした。先輩の方々からは、「ここまで来たら辞めてはいけない」とした後で、「あの時辞めなくてよかった」との声を聴くことの多さを新隊員に伝えてみえました。
 この日から新隊員たちは全国各地に散っていきます。良き自衛官、世のためになる人間を目指しますと所信を述べた隊員は北海道の東千歳へ、隣で食事をした二人は長野と春日井へ。その他金沢、湯布院などへ赴任していきます。その先々で様々なことに出逢い、その人しか感じることのできない時間を過ごしていきます。隊員は、自衛官として、人としてのあるべき姿を叩き込まれました。自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを使命とし、国民の声明・財産と我が国の領土、領海、領空を守り抜くための取組の他、国内外での大規模災害や国際平和協力活動を含む様々な事態に対応することです。今日修了式を迎えた新自衛官たちは、その崇高な考えを抱えて胸を張って大きな一歩を踏み出しました。しかし自衛隊と胸を張って言えない時代がありました。私が親しかった幹部の方は、一時自分の故郷で自衛官をしていると言えなかったと語りました。自衛隊員への見方が変わったのが東日本大震災後の災害対応、そして復旧支援の活動でした。活動から戻られた隊員に話を聞きました。惨状を目の当たりにしたと。隊長が「この後、隊員たちの精神的なサポートが大変です。」との言葉が今でも耳にあります。今年の能登地震での大変さもよくわかります。世界中で洪水をはじめ気候変動による災害が多発しています。これから日本も台風の季節です。何が起こるかわかりません。普段からの備を十分にして自分たちでできることは行い、それでもダメな時には彼らが来てくれます。安心して一所懸命生きましょう。「ありがとう」と感謝しながら。
「お母さん、やっぱり修了式は気持ちエエナ。元気になるわ」
「アンタはいつも、この日は機嫌エエナ。毎日修了式やったらエエのにな。
わかってます、用意してますよ」

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