人の温かさに触れて

 郡上白鳥、多治見へ行ってきました。白鳥では旧知の友から「飲まんか」と誘われて大喜びで出掛けました。7人も集まってくれて、いやぁ、飲みましたね。白鳥の酒屋さんは翌日隣町へ買い出しだったでしょう(笑)。一泊したのですがこの旅館が変な言い方ですが本当に旅館なのです。5年前にいったことがあるのですが女将さんが覚えていてくれて嬉しかったです。ゆっくり眠って翌朝おいしい朝ご飯をいただき多治見へ。
 多治見へは陶芸家で岐阜県重要無形文化財という86歳になられる安藤日出武さんが、「わしの造った穴窯で焼いてみんか」と言っていただいたので、陶芸はずぶの素人の私はこれまた何の見境もなく「はい」と応えてしまいました。後からお邪魔してよいものか考え悩みましたが、私と一緒に居てくださった多治見の友人が「そのままの言葉で受取りましょう」と背中を押していただき、スッキリした気持ちで「いざ穴窯へ」。その窯は県道から山の手に結構入ったところにありました。人里離れたという言葉がピッタリです。しかし到着すると窯場の他に、轆轤を挽くアトリエといってよいかどうか、それに立派な住まい。この住まいは、窯の作業が始まる前から、焼き上がりまで全ての作業の終わりまでの住み家なのでしょう。先ずはその住いに通され直々に点てていただいたお茶をいただきながら、陶芸のこと、世間のこと、人間のこと等々話は尽きません。一切偉ぶらず、優しい眼差しで「そうじゃのう」、「ほうや」の相槌がとても心地良いのです。いよいよ轆轤の前に座ることになりました。土は安藤さんがここの穴窯用にご自身が作られた土。市販の土とは癖があって違うよと言われ触ってみると、以前仙太郎窯で触った土とは全く異なるもの。ざらざらしているというか、粗いというか、野性というか。轆轤が回り始めます。安藤さんが原型の手前までされて「はい、好きなように」。先ず高くし、そして拡げ、自分の思う形にしようとすると壊れてしまいます。失敗を何度も何度も繰り返し。安藤さんの手も借りてようやくいくつか茶碗らしきものが出来てきます。3回の休憩を挟んで9個の茶碗と1個のぐい飲みが出来ました。ただ窯に火が入るのは春と秋なので出来上がりを見ることができるのは秋以降のようです。稀有の陶芸家辻正敏の作品の評については乞うご期待です。次の日は岐阜県現代陶芸美術館に「リサ・ラーソン展」が来ていたので鑑賞しました。残念ながらリサ・ラーソンは今年3月に93歳で亡くなられたとのことですが、陶器で作られた動物たちが持つそれぞれの目のやさしさは素晴らしいと感じました。リサの人柄そのものだったのでしょう。
 この三日間、郡上白鳥と多治見で過ごした時間は、人の温かさに溢れた三日間でした。本当に素晴らしい体験ができました。普段から人に接するということを考え、今度どなたかが訪ねてこられた時に自然にお迎えできるようにしたいものです。

「いやあっ、至福の時間やったなぁ。おおい、こんな後は飛び切りワインでも飲もか・・・」
「おおーい。・・・あっそうか。カミさん外国へ行ってはるんや。
ええワインは、帰国祝いにするとして、いつもの角のハイボール飲んどこ・・・」

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